ウェブアクセシビリティの基礎知識
ウェブアクセシビリティとは
ウェブアクセシビリティは、利用者の障害の有無やその程度、年齢や利用環境にかかわらず、ウェブで提供されている情報やサービスを利用できること、またはその到達度を意味しています。「アクセシビリティ」は「近づくことができる」という意味で、「ウェブや情報そのものへ到達できること」や「製品やサービスを利用できること」という意味でも使われます。
重要性
ウェブアクセシビリティの重要性は年を追うごとに増しています。日本の65歳以上人口は3,624万人(2024年10月1日現在)で、これは総人口の29.3%にあたります。2070年には、2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上という推計が示されています。身体障害者手帳の所持者が415.9万人、障害者の総数は推計値で1,164.6万人です。
障害の有無や年齢に関わらず、必要な時に自身の力で自由に利用できることは極めて重要です。
アクセシブルな状態とは
- 目が見えなくても情報が伝わる・操作できること
- キーボードだけで操作できること
- 一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
- 音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること
法的根拠
2024年4月1日から改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害者への合理的配慮が義務化されました。ウェブアクセシビリティへの取り組みは、合理的配慮を提供するための環境の整備として努力義務が課せられています。
障害者基本法等の法律や行政機関・公共機関等の情報発信では「情報アクセシビリティ」という言葉が用いられます。
受益者グループ
ウェブアクセシビリティを確保することで恩恵を受ける利用者グループは多岐にわたります。
視覚障害のある人
全盲の方はスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)、点字ディスプレイなどを使用。弱視・ロービジョンの方は、文字拡大、画面拡大、色反転などの機能を使用。
聴覚障害のある人
耳がまったく聞こえない、あるいは聞こえにくい状況。映像コンテンツを閲覧するときは、手話、字幕といった視覚的な要素から情報を得る。
視覚と聴覚の両方に障害のある人(盲ろう)
視覚情報と聴覚情報の両方を利用できない、または利用しづらい状況。コミュニケーションには指点字(ゆびてんじ)や触手話(しょくしゅわ)を用いる。
上肢障害のある人
肩から手指までの上肢に、炎症や麻痺あるいは不随意運動などの異常があって、マウスやキーボードを十分に動かせない方。スイッチ等の操作しやすい代替デバイスを用いて操作を行う。
発達障害や学習障害のある人、知的障害がある人
いずれも大きくは脳の機能に起因した障害。発達障害は主に自閉症、アスペルガー症候群などの障害のこと。学習障害は全般的な知的機能には障害がないのに、読み書きや計算など特定のことをするのが難しい障害。
色覚特性がある人
特定の色を見分けるのが難しい、あるいは全く見分けられない方。日本人男性の20人に1人は色覚特性があるといわれている。
高齢者
加齢によって視力や聴力が低下したり、指先の細かい動きが難しくなったりする。ウェブアクセシビリティを確保していれば、高齢の利用者にとっても使いやすいウェブサイトや情報システムになる。
一時的に障害がある状態の人
電車内で動画を見たいのにイヤホンを忘れた、眼鏡を忘れてきたので文字がよく見えない、手を怪我してマウスが使えないなど。
よくある誤解
誤解1: 補助機能を設置すればアクセシビリティが確保できる
文字サイズ拡大ボタンやカラーテーマ変更ボタンのような補助のための機能を設置すれば、アクセシビリティが確保できるという誤解があります。
正しくは: 端末で設定する文字サイズや色変更に対応し、読み上げて伝わる内容や正しく操作できる実装を優先する必要があります。
誤解2: チェックツールだけでアクセシビリティ向上が可能
チェックツールを使って改修することだけがアクセシビリティ向上の方法であるという誤解があります。
正しくは: チェックツールで見つかる問題は、全体の2割から3割程度です。基本的に人がチェックする必要があります。
アクセシビリティとユーザビリティ
「アクセシビリティ」と「ユーザビリティ」はどちらも外来語で、インターネットの普及にあわせて使われるようになった歴史の浅い言葉です。
「ユーザビリティ」は「特定のユーザーが特定の利用状況において、システム、製品又はサービスを利用する際に、効果、効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い」(ISO 9241-11)と定義されています。
アクセシビリティとユーザビリティは明確に区分できるものではなく、互いの言葉や概念、基本理念は重複している部分もあります。